豆知識

神棚の祀り方

豆知識

神棚はどこに設置すればよい?

神様をお祀りする神棚を設置する場所は、次のような条件に合致するところが最適です。

  • 明るく清浄なところ
  • 南もしくは東向き
  • 大人の目線よりも高い場所(見上げるくらい)
  • 家族がいつも集まるところ

わかりやすい例として、たとえばリビングの北側もしくは西側の壁の上方に取り付けると条件を満たせます。

避けたほうがよいこと

神棚は、以下の2点を避けられるよう設置しましょう。

  • 神棚の下をとおる
  • 二階以上がある場合に神棚の上を歩く

とはいえ、上記を避けつつ神棚を設置するのが難しい場合も多々あります。神棚の下を通らないようにするのはまだしも、上を歩かないようにするのは家の構造上難しい場合もあるでしょう。

その場合は、神棚の上の天井などに「雲」を取り付けます。雲は「この上には何もありません」という意味を示すものです。これにより「神棚の上には何もない=人が通ったりしていない」ことを表します。

「雲」とは?

平屋建てしかない時代と違い、現代ではほとんどの家が2階建て以上です。中には数十階建てのタワーマンションもあり、神棚より上に人が立たないよう生活することが難しくなりました。神棚の上に部屋がある状況は、いわば「神様より上に人が立っている」状態。これが神様に対して失礼にあたると考えるようになったため「上には雲(天)しかない」という意味を込めて神棚の上に「雲」を取り付けます。

「雲」は紙、板、木を雲の字の形にくり抜いたもの、手書きやパソコンなどで作成したものなど種類が豊富です。また「雲」以外に「天」「上」「空」など同じような意味を表す言葉もあります。

条件に合致する場所がないときは?

最近は住宅事情の変化もあり、基本的な条件を満たした設置場所がない家も珍しくありません。もし前述したような条件に合致する場所がない場合は、現代に即した形の神棚を検討するとよいでしょう。

昔ながらの神棚というと壁に釘を打ったり穴を空けたりするイメージがあるでしょうが、必ずしもそうする必要はありません。たとえば食器棚や本棚など、高さとある程度の広さがある家具の上を活用するのも一つの方法です。

食器棚などの上のスペースに宮形(みやがた)をおいて神棚にできればよいですが、あまり広くない場合はお札をお祀りするだけでも十分です。「神棚を置く場所がないから」という理由で神棚を設置することを諦める必要はありません。

神棚の祀り方

神棚をお祀りするプランは大きく3つの工程で考えられます。

1.場所を決める

  • 明るく清浄なところ
  • 南もしくは東向き
  • 大人の目線よりも高い場所(見上げるくらい)
  • 家族がいつも集まるところ

以上の条件を基に神棚を設置する場所を決めます。壁に穴を空けたり釘を打ったりできない場合、ちょうどよい場所がない場合は、本棚や食器棚など背の高い家具の上のスペースを神棚として活用するのもよいでしょう。

神棚としての姿かたちも必要な部分ではありますが、本質は神棚をとおして神様をお参りすることにあります。どのような場所であれ、神棚を設置して神様をお迎えすることが大切です。場所がないからと神棚を諦める必要はありません。

2.宮形(みやがた)を据える

神棚を置く場所が決まったら、お札を納める宮形(お宮)を据えます。宮形にはさまざまな種類があり、大きさからデザインまで多種多様です。神棚を置くスペースや納めるお札の数などに応じて、好みのものを選びましょう。

伝統的な神棚
お札を納めるお宮の数一社造り、三社造り、五社造り、七社造りなど
屋根の形状板葺き(いたぶき)、檜皮葺き(ひかわぶき)、茅葺き(かやぶき)など
素材木曾檜、スプルース、地桧、米桧、米ヒバなど
新しい神棚

住宅事情の変化もあり、最近では小スペースで設置できる新しい神棚も登場しています。

  • ウォール神棚
  • 雲型神棚
  • 箱組(はこぐみ)

3.神棚に祭器具を配置する

神棚には次のような「祭器具」を配置します。祭器具が多いほど豪華絢爛な神棚になりますが、スペースが狭い場合などは最小構成で構いません。

祭器具の紹介と使途

祭器具は神棚に米、水、塩や酒などの神饌を供えたり榊を立てたりする器具です。代表的な祭器具は以下のとおり。

名称用途写真番号
しめ縄(しめなわ)境界を作り神聖な場所を示す印になる神具
紙垂(しで)雷光(稲妻)を模した形で邪気を祓い豊作を願う神具
榊立(さかきたて)神が宿る木、栄える木などのいわれを持つ榊(さかき)を立てる器具
瓶子(へいし)神様へ備える食べ物(神饌/しんせん)を供える器で、お酒を盛る
水器(すいき)神様へ備える食べ物(神饌/しんせん)を供える器で、水を盛る
平甕/平瓮(ひらか)神様へ備える食べ物(神饌/しんせん)を供える器で、米と塩を盛る
三方(さんぽう)もしくは折敷(おしき)瓶子、水器、平瓮を乗せる器
燈明(とうみょう)神様へ供える灯火

このほかに「神鏡(しんきょう)」「真榊(まさかき)」「かがり火」などもあります。それぞれ専用の商品もありますが、ご家庭にある器でも構いません。

神饌を備える器は、家庭用の食器と区別して一緒に洗わないようにします。ご家庭にある器を利用する場合は、混じらないよう注意しましょう。

祭器具の配置

祭器具には正しい順番があります。理想的な配置は神棚の前に横並びで米、酒、塩、水を配置する形ですが、スペースの問題で横並びにできない場合は縦でも構いません。以下の図を参考に祭器具を配置しましょう。

基本は米→塩→水の順に優先順位が高く、中→右→左の順に並べます。酒を含める場合は、上図を参考に配置しましょう。

最小構成は米、塩、水の3つ+可能なら酒

スペースの関係などで最小構成とする場合は「米」「塩」「水」の3つをお供えし、可能であればさらに「酒」を追加します。

しめ縄の種類

神棚に張るしめ縄にはいくつかの種類があります。地域性などにより主流が異なるため、事前に確認するとよいでしょう。

  • 大根注連(だいこんじめ)
  • 牛蒡注連(ごぼうじめ)
  • 前垂れ(まえだれ)
  • 玉飾り(たまかざり)
  • 輪飾り(わかざり)

代表的なしめ縄は上記の5種類で細いものや太いもの、装飾があるものまでさまざまです。しめ縄を張る場合は等間隔に紙垂を挟みます。

4.お札を納める

神棚には主に次の3種類のお札を納めます。

種類意味場所(位置)
神宮大麻(じんぐうたいま)伊勢神宮のお札真ん中、もしくは一番前
氏神様(うじがみさま)地域の神社のお札向かって右、もしくは2番目
崇敬神社(すうけいじんじゃ)そのほか崇敬する神社のお札向かって左、もしくは3番目

最も優先順位が高いのは、伊勢神宮から何度もご祈祷を受けて家庭へ届く神宮大麻です。神宮大麻を筆頭に氏神様のお札を納め、とくに崇敬したい神社がある場合は崇敬神社のお札も納めます。

宮型のタイプ御札の配置
一社造り手前から順に神宮大麻、氏神様、崇敬神社
三社造り神棚に向かって真ん中に神宮大麻、右に氏神様、左に崇敬神社

神宮大麻および氏神様のお札と違い、崇敬神社のお札は何体(何枚)お祀りしても構いません。複数の崇敬神社のお札をお祀りする場合は、重ねてお祀りします。

お札に巻いてある紙は剥がす

神宮大麻や氏神様などのお札には上巻紙という薄紙が巻かれていますが、これは神社から神棚までを清浄に保つことが目的です。要するに「御札が汚れないためのカバー」なので、神棚にお祀りする際は薄紙をむいて中のお札だけをお祀りします。

お札の処分方法

神棚に1年間お祀りしたお札は、神社へ納めてお焚き上げで天に還すのが一般的です。神社には古いお札(古札)を納める場所が用意されており、そこへ納めるとお焚き上げしてもらえます。また年末年始は「どんと焼き」に向けて地域に古いお札を納める場所を設けることも少なくありません。古いお札を納めたら、代わりに新しいお札を受けましょう。

毎日のお祭り

神棚には、毎日お参りして家族の健康や交通安全などを祈願します。

毎朝、食事の前に神棚の榊の水を換える、燈明に火を灯す、お供えをする
毎日のお供えもの(換えるもの)米、塩、水
お正月、毎月1日、そのほか家族の大切な日には?酒、野菜、果物などを追加でお供えする

ほかにもいただきものや季節の初物などは、まず神棚(神様)にお供えしてからいただきましょう。神棚にお供えしたものは「お下がり」といい、神様の力をいただく意味があります。

神棚の作法

神棚をお参りする際は、神社と同じ「二礼二拍手一礼(二拝二拍手一拝)」で行います。神棚をお参りする意味は、毎日の平穏な生活や家族の健康を祈り感謝することです。家族揃ってお参りするのが一番よいものの、難しい場合は一人ひとりが出かける前にお参りします。また、帰宅時や寝る前にもお参りしましょう。

お正月の迎え方

お正月を迎える準備というと大掃除がありますが、このとき神棚も一緒に清掃して新しいお札を祀る準備をします。1年間お守りいただいたお札やお守りは神社に納め、お焚き上げで天に還しましょう。

古いお札やお守りの納め方

各神社にはお焚き上げするお札やお守りを納める場所が用意されています。また地域によってはどんと焼きに合わせて収集場所が設けられることもあるため、そこへ古いお札やお守りを納めましょう。本来は祈願した神社やお守りを受けた神社に納めるのがよいとされますが、近隣の神社でも問題はありません。

ただし、初宮参りや七五三などの子どもの成長にかかわるお札は、子どもが一定の年齢になるまで記念にお祀りし続けることもあります。

願いを掛けたお札やお守りは?

たとえば心願成就祈願のお札などは、願い事が成就するまでお祀りします。無事に願いが成就したら速やかに神社へお礼参りをし、お札を納めて神様に感謝を伝えましょう。

お正月の神棚の祀り方

親族に不幸があったときは?

神道では、家族や親族などに不幸があった場合に、神事や晴れの行事への参加を控える慣習があります。「服忌(ぶっき)/忌服(きぶく)」などと呼び、いわゆる喪に服す期間です。もともとは服、忌それぞれが意味を持っていましたが、現代では区別せずひとつと捉えられています。

  • 服(ふく)|喪服を着ること、すなわち喪に服すことを表す
  • 忌(き)|人の死を畏れ忌むこと

神道において人の死は「穢(けがれ)」に触れる瞬間であり、畏れ忌むべきものです。穢は「気枯れ」であり、大切な人の死にふれて心身衰弱している様を表しています。

家族や親族などに不幸があると「1年間は神棚のお札を取り替えず、神祭りも行わない」といわれることもありますが、これは誤解です。穢の概念や服忌(喪)の慣習は時代背景、立場の違いや地域性などさまざまな要因により変化し一様ではありません。大切なことは、その時代その土地に合わせることです。現代における基準を理解するためにも、まずは正しい服忌の心得を知っておきましょう。

忌の期間

忌の期間(喪に服す期間)は、自分自身との関係性で異なります。直系か傍系か、血族か姻族かなど関係性もさまざまですが、ポイントは親族関係における距離。「何親等離れているか?」で考えると簡単です。

本人との関係具体的な関係忌の期間姻族の場合
一親等父母、夫、妻、子50日例)配偶者の父母|30日
二親等祖父母、孫、兄弟姉妹30日例)配偶者の祖父母|10日
三親等曽祖父母、ひ孫、甥、姪、伯叔父母10日例)配偶者の甥、姪|3日
四親等姪孫(てっそん)、従兄弟姉妹3日0日 ※民法上の親族外
その他親族(五親等以降)曽姪孫、従姪孫(じゅうてっそん)1日0日 ※民法上の親族外
とくに親しい友人、知人親友、恩人2日程度0日

親等が離れるにつれ50日、30日、10日、3日、1日と忌の期間が少なくなっていき、血族に対して姻族は1基準少ない日数で忌が明けます。民法上の親族の範囲により血族なら最小1日、姻族は最小3日で忌の期間が明けることを覚えておきましょう。

民法上の親族の範囲

民法では親族を次のように定義しています。

  • 配偶者
  • 六親等以内の血族
  • 三親等以内の姻族

七親等以降の血族および四親等以降の姻族のほか、姻族の姻族などは親族に該当しません。

姻族の忌の期間の数え方は、配偶者を一親等目として数えると簡単です。配偶者を一親等と数えると配偶者の父母は二親等(配偶者→父母)、配偶者の兄弟姉妹は三親等(配偶者→父母→兄弟)となり、それぞれの忌の期間は30日、10日となります。

またそれぞれの配偶者の忌の期間は、以下のとおり2基準少ない期間です。

本人との関係忌の期間配偶者
兄弟姉妹(二親等)30日3日 ※二親等の姻族
甥姪(三親等)10日1日 ※三親等の姻族
伯叔父母(三親等)10日1日 ※三親等の姻族
配偶者の兄弟姉妹(二親等の姻族)10日1日 ※民法上の親族外

先ほど「姻族の忌の期間は最小3日」と書きましたが、上表のとおり配偶者の兄弟姉妹の配偶者には1日の忌の期間があります。ただし、民法上の親族には該当しません。

本人同様に民法上の親族の範囲が適用されるため、忌の期間があるのは本人からみて三親等以内の親族の配偶者(三親等の姻族)までです。

  • 二親等離れた兄弟姉妹の忌の期間は血族で30日、その配偶者は2基準少ない3日
  • 三親等離れた甥や姪は10日、その配偶者は1日

本葬や社葬などが忌の期間を明けてから行われる場合は、当日のみ忌の期間が追加されます。

忌の期間の心得

  • 地域の祭礼行事への参加、神社への参拝に加え、境内へ入ることも遠慮する
  • 結婚式、初宮参り、七五三などの人生儀礼への参加を遠慮する
  • 忌の期間、葬式を出した家(喪家)は神棚を白紙で覆い、神祭りを遠慮する(最長50日)
  • 喪家は翌正月の年賀状、年賀の挨拶や正月飾りは行わない
  • 正月にかけて50日の忌の期間が明ける場合、年明け後の小正月もしくは旧正月に新しいお札をお祀りして正月を迎える

忌明けの心得

  • 忌の期間が過ぎたら直ちに神棚の白紙を取り除き、神祭りを再開する
  • 新年のお伊勢様、歳神様などのお札は忌の期間(50日間)が過ぎてからお祀りする
  • 立場上やむ無く地域の祭礼行事や人生儀礼などへ参加する必要がある場合、地元の神社で「忌明けの祓い」を受ける
忌明けの祓いとは?

家族の死という大きな悲しみを乗り越えるための区切りの儀式です。「これ以上不幸が重なりませんように」との祈りと家内安全の願いを込めて、家と家族のお祓いをします。以前は死後50日(49日後)に行う五十日祭(神式)、四十九日法要(仏式)などで忌明けの祓いを受けて忌明けとしていました。しかし現代では、忌の期間が過ぎれば自然に忌明けすると考え、必ずしも忌明けの祓いを受ける必要はありません。


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