豆知識

諡(おくりな)とは-神道における戒名にあたる名前

諡とは何か

諡(おくりな)とは、神道において故人に贈られる名前のことです。仏教の戒名にあたるものですが、その考え方や付け方には大きな違いがあります。

神道では、人は神々から生命を授かってこの世に生まれ、亡くなった後は再び神々のもとへ帰り、家を守る神となるとされています。諡は、その家の守り神となった故人に贈られる、尊敬と感謝のしるしとしての名前です。

戒名との違い

戒名と諡は、どちらも死後に贈られる名前という点では共通していますが、考え方の根本が異なります。

戒名は、仏弟子になった証として授けられる名前です。本来は生前に授戒(かいを受けること)によって得られるものですが、現在では死後に僧侶から授けられるのが一般的です。位の高い戒名を授けてもらうには、相応のお布施が必要とされることもあります。

一方、諡には「位」という考え方がありません。年齢と性別という、誰にでも当てはまる基準によって定められるため、生前の身分や信仰の深さ、寄進の額などによって名前が変わることはありません。どなたであっても、等しく諡を受けることができます。また、僧侶に戒名を依頼するように特定の人に諡を「付けてもらう」という工程も本来は必要なく、謝礼やお布施も発生しません。

諡の構成-「諡」と「命」

諡は、故人の本名(生前の名前)の後ろに付け加える形で構成されます。基本的な構成は次のとおりです。

生前の名前 + 年齢・性別に応じた諡 + 命(みこと)

「命」は、神様であることを示す尊称です。たとえば、成人男性であれば「大人(うし)」という諡が用いられるため、「山田太郎」さんが亡くなった場合は「山田太郎大人命(やまだたろう うしのみこと)」となります。

年齢・性別による諡の種類

諡は、亡くなった年齢によって細かく区分されています。伝統的な区分は以下のとおりです。

年齢の目安男性女性
3歳まで嬰児(みどりご)嬰児(みどりご)
6歳まで稚児(ちご)稚児(ちご)
15歳まで童男(わらべ)童女(わらめ)
19歳まで彦(ひこ)姫(ひめ)
40歳まで郎男(いらつお)郎女(いらつめ)
70歳まで大人(うし)刀自(とじ)
70歳超翁(おきな)媼(おうな)

この表に従えば、72歳で亡くなった男性は「翁命(おきなのみこと)」、18歳で亡くなった女性は「姫命(ひめのみこと)」となります。

現代では簡略化されることも多い

上記のような細かい年齢区分は、現代ではすべてが厳密に使われているわけではありません。近年は、次のように大きく2つに分けて諡を定める例も増えています。

区分男性女性
成人大人(うし)刀自(とじ)
子供(未成年)彦(ひこ)姫(ひめ)

どちらの方式を採用するかは、神社や地域、ご家庭の考え方によって異なります。

諡はいつ、どこで定められるのか

諡が定められ、実際に用いられるようになるのは「遷霊祭(せんれいさい)」においてです。遷霊祭は、故人の御霊(みたま)を霊璽(れいじ、仏式の位牌にあたるもの)に遷す儀式で、このときに霊璽へ諡が記されます。儀式の流れについては神葬祭の流れのページもご覧ください。

諡が刻まれる場所

諡は、以下の2つの場所に必ず刻まれます。

霊璽(れいじ)-仏式の位牌に相当するもので、故人の御霊が宿るとされる場所です。自宅の祖霊舎(それいしゃ)にお祀りされます。

奥津城(おくつき)-神道におけるお墓のことです。墓石には「○○家奥津城」と刻まれることが多く、個人の墓標がある場合は「○○大人命奥津城」のように、諡を含めた形で刻まれます。

霊璽や奥津城に諡を記すことが省略されることは、基本的にありません。

まとめ

諡は、神道において故人に贈られる、戒名にあたる名前です。仏教の戒名とは異なり、年齢と性別という一定の基準にもとづいて、すべての方に平等に贈られるものであり、特定の人に依頼したり、お布施を渡したりする必要はありません。遷霊祭において霊璽に記され、その後は霊璽や奥津城に刻まれ続ける、故人を尊び、家の守り神として迎えるための名前です。

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